治療のご案内

当院ではすべての整形外科疾患を対象に診療しています。
当院で行なっている代表的な疾患の治療についてご紹介します。
どの診療科にかかればいいのかよくわからない場合でも、まずは受診してご相談ください。
整形外科へ来られる患者さんは、ケガやぎっくり腰などの急性症状の方、長期間積み重なった原因によって引き起こされた慢性症状の方などさまざまです。まずは辛い症状を早く緩和させることが第一ですが、慢性症状の場合は、根本的な原因を探り出して解決していくことも重要だと考えています。患者様の言葉に耳を傾けながら、一緒に最適な治療方針を立てていきます。
診断について
適切な治療を行うためには正確な診断が不可欠です。当院では、レントゲン検査だけでなく、超音波(エコー)検査やMRI·CT検査を積極的に活用して、より正確な画像診断を行えるようにしています。ただし、画像検査で異常が見つからないことも多々ありますので、丁寧に診察することで原因を探り、“木を見て森を見ず”とならないよう心がけています。
治療について
外傷の処置を除いて、整形外科の治療の三本柱は、注射リハビリになります。
整形外科で出されるお薬は“鎮痛剤と湿布”というイメージですが、鎮痛剤にもさまざまな種類があり、患者様の状態によって使い分けます。通常の薬では改善しにくいような症状には、漢方薬が有効なこともあります。できるだけ患者様のニーズに合わせた処方を心がけています。
注射
お薬の調整だけでは痛みのコントロールが難しい場合には、必要に応じてさまざまな注射を行っています。注射は決してその場しのぎの治療ではありません。痛みの原因部位に直接薬剤を注入することによって、強い炎症を抑えたり神経の興奮を鎮めたり動きをスムースにしたりすることができます。根本的な治療にもつながって治療期間の短縮が期待できます。
リハビリ
何らかの運動機能障害によって症状が引き起こされている場合には、機能回復を促すためにリハビリを行います。柔軟性や可動性、バランスを向上させることで、「痛い→動かせない→機能低下→さらに痛くなる」という悪循環を断ち切り、症状を根本から治していくことができます。
院長 真鍋尚至
どの部位の症状でお困りですか?

くび Cervical spine

首·肩のこりや痛みでお悩みの方は大変多いです。不良姿勢による筋肉疲労にストレスや睡眠不足などが加わり、頚部周囲の筋肉の血流が滞って筋肉が硬くなることがおもな原因です。とくに最近ではスマホの長時間使用による首·肩こりが大変多いです。ひどくなると肩甲骨や上肢にかけての痛みやしびれといった神経症状、頭痛·吐き気·息苦しさなどの症状がでることもあります。

検査·診断

頚椎のレントゲン検査にて、ストレートネックやなで肩·巻き肩がないか、脊椎の歪み(側弯)による肩下がりがないか、椎間板の変性がないか、骨の棘(とげ)によって神経の通り道が狭くなっていないかなどを調べます。上肢の神経症状があればMRI検査を行うこともあります。
リラックスの妨げとなっているストレスも大きな原因となりますので、仕事や家庭、学校、スポーツなどの環境因子についても探っていきます。
おもな疾患名:頚肩腕症候群、頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、頚椎症性脊髄症

治療

リハビリ

運動器リハビリテーション(理学療法)によって、頚部から肩甲帯や胸郭にかけての筋緊張をほぐして柔軟性を向上させ、良好な姿勢を保てるようにしていきます。必要に応じて低周波などの物理療法も行います。自宅でできるセルフストレッチやマッサージなどのセルフケアの指導も行います。

薬物療法

鎮痛剤や筋緊張を和らげる薬(筋弛緩薬)、血行を改善して体を温める作用のある漢方薬などを処方します。睡眠不足や心配事·イライラなどのストレスによる自律神経の影響がある場合には、気分を落ち着かせる薬を用いたりします。

ハイドロ(筋膜)リリース注射

こりの強い部位、特に指で押して痛みやしこりがある部位に、エコーを見ながら筋肉と筋肉との境の筋膜に細い針を刺入して、生理食塩水や局所麻酔薬などを注入します。動きの悪かった筋肉がスムースに動ことができるようになり、圧迫されていた神経も解放され、こりがとれて痛みが緩和します。

腕神経叢ブロック

頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症による神経への圧迫が原因で、上肢の神経痛がある方が対象となります。 上肢の強い痛みやしびれがあり、薬物療法で痛みがなかなか改善しない場合に行います。
首の横のつけ根にある神経の通り道に神経の束(腕神経叢)があり、エコーを見ながら針先を神経のすぐ近くまで進めていって局所麻酔薬を注入します。一瞬ビリッと電気が走ったような痛みがありますが、すぐに薬が効いて痛みがとれます。ブロック後は2~3時間ほど上肢に力が入らない状態となります。数時間後に局所麻酔薬の効果がなくなっても、痛みがすぐ元通りになることはありません。興奮した神経をブロックで一旦鎮めたことで、神経がある程度落ち着いた状態となり、内服薬でもコントロールできるくらいの痛みに落ち着くのです。ただし、元々の痛みが強い場合には、定期的に数回のブロックを繰り返し行うことがあります。

肩 Shoulder

五十肩(肩関節周囲炎)

肩の代表疾患である五十肩(肩関節周囲炎)は、肩の痛みとともに徐々に動かしづらくなってくる疾患です。関節包という関節全体を覆っている線維の袋が炎症を起こして縮こまってしまった状態で、主な原因は肩関節を構成する組織の変性と使いすぎだと考えられています。自然発生することが多いですが、ちょっとした外傷がきっかけになることもあります。最初は炎症による痛みが主な症状ですが、徐々に炎症が落ち着いて関節が硬くなることで拘縮という状態(凍結肩)になります。
以前から五十肩は自然に治るものといわれ放置されることが多かったのですが、痛みや拘縮がかなり長期にわたって続くことがあるため、拘縮の軽い早い時期から積極的に治療することをお勧めします。

検査·診断

レントゲン検査にて関節軟骨のすり減りや骨の棘(とげ)、石灰の沈着がないかなどを確認します。挙上した状態での撮影で関節の動きの硬さをみます。エコー検査にて腱板断裂がないかどうかもチェックします。

治療

痛みが強く夜間疼いたりする場合は、関節内への抗炎症剤(ステロイド)の注入を行います。可動域制限が少ない痛みだけの早期段階では、注射のみで軽快することもあります。その後は、可動域制限に対して理学療法士によるリハビリを行っていきながら、ヒアルロン酸を注入したり、筋肉のつっぱりが強い部位にハイドロ(筋膜)リリース注射をしたりしていきます。治療によって五十肩は徐々に改善していくことがほとんどですが、難治性の場合はサイレントマニピュレーションという徒手的な授動術を行います。

サイレントマニピュレーション

神経ブロックで肩から腕全体に麻酔をかけて痛みを感じない状態にした上で、拘縮した肩をゆっくりと動かしていくことによって、硬くなった関節包を破断させて肩の拘縮を解除する方法です。所要時間は、手技自体は5分程度ですが、麻酔と処置後の経過観察時間を含めると30分程度です。
麻酔によって術中の痛みはありませんが、2〜3時間で麻酔が切れますので、術後は早めに鎮痛剤を飲んでいただきます。再拘縮を起こさないために、しばらくリハビリが必要となります。
ご予約が必要となりますのでまずは受診された上でご相談ください。

肩腱板断裂

肩の腱板は加齢にともなって変性し擦り切れていきます。いつの間にか擦り切れていく場合は徐々に痛みがでてきますが、転倒などによって急に断裂した場合は強い痛みがでて挙上困難となります。おもな症状は肩を動かしたときの痛みですが、炎症が強いと夜間疼いて眠れないといった症状もでます。腱板が切れていると肩を動かせなくなると思われるかもしれませんが、他の残った腱板や筋肉が代償するため、肩の動きは比較的保たれることが多いです。

検査·診断

レントゲン検査にて軟骨のすり減りや骨の棘などの変形をチェックします。エコー検査にて断裂の有無を調べます。エコー検査にて断裂があれば、より詳しく評価するためにMRI検査を行います。

治療

転倒などで急に発症した場合は痛みが強いですので炎症が落ち着くまで安静にします。痛みが強く夜間も疼いたりする場合は抗炎症剤(ステロイド)の注入を行い、そうでなければヒアルロン酸の注入を行っていきます。理学療法(運動器リハビリ)を行って機能回復を図っていきます。一度損傷した腱板は元どおりには戻りませんが、日常生活動作に支障のない程度に機能が保たれることが多く、必ずしも手術になるわけではありません。実際に手術が必要な方は30%程度です。どうしても痛みが強く、筋力低下や可動域制限といった機能障害がある場合は鏡視下腱板修復術を行います。

肩関節脱臼

肩関節はその構造から可動域が広いかわりに不安定な関節のため、スポーツや転倒などで脱臼しやすい関節です。特にラグビーや柔道などのコンタクトスポーツ、スノーボードといった転倒して手をつきやすい競技などに多くみられます。脱臼した場合はできるだけ早く整復する必要があります。一度脱臼すると、関節唇という関節を安定化させる線維組織が損傷してしまうため、肩の不安定性が残ってしまうことがあります。特に若年者は(亜)脱臼が再発する可能性が高く、再脱臼をくり返す場合は手術が必要となります。

検査・診断

レントゲン検査にて脱臼だけでなく骨折の有無も確認します。MRI検査にて、関節唇損傷や腱板断裂がないか確認します。関節唇損傷をより詳しくみるためには関節造影によるMRI検査が必要となります。

治療

初めての脱臼の場合は、脱臼整復をした後、外旋装具による固定を3〜4週間行います。装具を外した後は可動域訓練や腱板の筋力強化訓練などのリハビリを行い、可動域制限がなく、不安定感や痛みがなければスポーツに復帰します。痛みや不安定感が残ったり、脱臼・亜脱臼を2回以上くり返す場合には、関節鏡視下に損傷した関節唇を修復する手術が必要となります。手術を行った場合のスポーツ復帰は約6ヶ月程度となります。

肘 Elbow

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

肘の疾患で最も多いのが上腕骨外側上顆炎です。これは別名テニス肘ともいわれるもので、手首を反らす筋肉を使いすぎて肘の外側の筋付着部に炎症を起こしたものです。
手のひらを下にして物を持ち上げる動作やタオルをしぼる動作、ペットボトルのふたを開ける動作などで肘に痛みが出現します。

検査・診断

痛みを誘発するテストをして陽性であれば診断されます。エコー検査にて筋付着部の血流増加や線維の乱れがみられることがあります。

治療

痛みが強い場合は抗炎症剤(ステロイド)の注入を行います。外用剤を貼ったり、炎症部の負荷を減らすためのバンドを装着したりします。筋の使いすぎによる柔軟性の低下がありますので前腕のストレッチが有効です。肩こりが関連していることも多いので、肩甲骨周囲から上肢全体をほぐすリハビリを行うことも効果的です。慢性化している場合には、拡散型圧力波治療器(ショックマスター)をあてて治癒を促進します。
拡散型圧力波治療器
拡散型圧力波治療器

手 Hand

腱鞘炎(ばね指)

指の付け根の関節(MP関節)や第2(PIP)関節に痛みが出ます。進行すると指が曲がった状態でひっかかって伸ばしにくくなり、急にはじけるように伸びる“ばね現象”が生じます(ばね指)。特に朝方に症状がでやすいです。手作業をする人に多いですが、出産後や更年期の女性にも多くみられます。
原因は、手指の使いすぎによって指の付け根にある腱の通り道(腱鞘)に炎症が起こり、腱鞘が腫れて腱がスムースに動かせなくなるためです。

検査

指の付け根を押さえたときの痛みやばね現象があれば診断できます。

治療

手指の使い過ぎを減らし、手や腕の筋肉をストレッチやマッサージでほぐします。薬物療法では、外用剤や漢方薬を用います。痛みが強く難治性の場合にはステロイドの腱鞘内注入を行います。注射は有効ですが、腱を劣化させるおそれがあるため頻回に行うことはできません。なかなか改善せず再発をくり返す場合は、腱鞘切開の手術を行う必要があります。

母指CM関節症

物をつまむ時やビンのふたを開ける時など、母指に力を入れる動作で手首近くの付け根の関節(母指CM関節)に痛みが出ます。つまむ動作をするときに最も重要な関節ですので、使い過ぎによる老化がおこりやすく、軟骨がすり減って関節が変形します。炎症があれば関節が腫れて強い痛みが出ます。

検査・診断

レントゲン検査にて関節軟骨のすり減りや骨の棘(とげ)などの変形を確認して診断します。

治療

消炎鎮痛剤の内服や外用剤、関節の動きを制限して安静を保つためのサポーター装具やテーピングを使用します。それでも不十分な場合には、関節内に抗炎症剤(ステロイド)の注入を行います。なかなか痛みが改善しない場合には、骨を切除して靱帯を再建する関節形成術や関節固定術などの手術を行います。

腰 Lumber spine

腰痛でお悩みの方は非常に多く、当院を受診される方の中でもっとも多い症状です。ぎっくり腰のような急性腰痛もあれば慢性的な腰痛持ちの方もおられます。痛みの発生源は、椎間板、椎間関節、仙腸関節、靭帯、筋肉や筋膜などさまざまです。症状は腰痛だけでなく、神経が圧迫されて下肢の痛み・しびれをともなう坐骨神経症状など多彩な症状があります。
おもな疾患名:腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、腰椎椎間板症、腰椎すべり症、腰椎分離症

検査・診断

腰椎のレントゲン検査にて脊椎の歪みや加齢による変性を確認します。下肢の神経症状がある場合はMRI検査を行い、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄による神経の圧迫がないかを調べます。
成長期の腰痛ではレントゲン検査でははっきりしない椎弓疲労骨折の可能性がありますので、MRIやCT検査が必要となります。

治療

コルセット

ぎっくり腰のような急性腰痛で動けないほどの強い痛みがある場合は、コルセットを装着して安静にを保ちます。コルセットは保険適用となりますので、費用負担は少なくてすみます。

薬物療法

鎮痛剤は急性期に用いるものと、慢性期に用いるものを使い分けます。下肢の神経痛がある場合は神経痛の鎮痛剤を用います。筋肉の緊張を緩和させる筋弛緩剤や、血行を改善し体を温めたり胃腸を整えたりする漢方薬なども必要に応じて処方します。
痛みがあると動作を制限されてしまって余計に痛みが長引きやすいので、薬を積極的に使用してでも早く動けるようになることが、結果的には治療期間の短縮につながります。

リハビリテーション

理学療法士が体幹から骨盤周辺の筋緊張をほぐしていくことで痛みをとります。長引く腰痛は、体幹や下肢の柔軟性が低下しバランスが崩れていることで腰に負担がかかっていることがありますので、セルフストレッチや体幹トレーニングの指導を行い、腰痛の根本的な解決を図っていきます。低周波やホットパックなどの物理療法も必要に応じて行います。

注射

筋肉や筋膜からの痛みにはハイドロ(筋膜)リリース注射を行い、椎間関節や仙腸関節からの痛みに対しては関節内注射を行います。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛に対しては、神経根ブロックや仙骨裂孔ブロックなどの神経ブロック注射を行います。

腰部神経根ブロック

腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による神経への圧迫が原因で、臀部から足にかけての下肢の痛み、すなわち坐骨神経痛や大腿神経痛のある方が対象となります。
腰椎から出てすぐの神経根に直接ブロック注射をする方法です。レントゲンモニターを見ながら、針先を神経のすぐ近くまで進めていって局所麻酔剤を注入します。一瞬ビリッと電気が走ったような痛みが出ますが、すぐに薬が効いて痛みがとれます。
ブロック後は下肢に力が入りにくい状態となります。数時間後に局所麻酔薬の効果がなくなっても、痛みがすぐ元通りになることはありません。興奮した神経をブロックで一旦鎮めたことで、神経がある程度落ち着いた状態となり、内服薬でもコントロールできるくらいの痛みに落ち着くのです。ただし、元々の痛みが強い場合には、定期的に数回のブロックを繰り返し行うことがあります。

腰椎椎間関節注射、仙腸関節注射

いわゆるぎっくり腰のような急に起こる強い腰痛には、椎間関節や仙腸関節への注射が効果的なことがあります。椎間関節とは脊椎の背中側を連結している直径2cmほどの小さな関節で、仙腸関節とは脊椎と骨盤を連結する関節です。いずれも痛みの発生源になりやすい関節です。レントゲンのモニターを見ながら、この関節に局所麻酔薬を注入することで痛みをとることができます。

股 Hip joint

変形性股関節症

変形性股関節症とは、加齢にともなって股関節の軟骨がすり減ることによって、腫れや痛みが起こった状態をいいます。主な症状は痛みと可動域制限です。初期の症状では、立ち上がりや歩き始めに下肢の付け根の痛みを感じます。進行すると、歩行時や安静時にも痛みが出るようになります。日常生活動作では、長時間の歩行が辛くなったり、階段昇降で手すりが必要になったりします。関節の動きが悪くなると、足の爪を切りにくくなったり、靴下が履きにくくなったり、和式トイレが困難になったりします。変形性股関節症は女性に多くみられ、原因の約80%は股関節の形成不全だといわれています。

検査・診断

レントゲン検査にて、軟骨のすり減り具合や骨の棘(とげ)、大腿骨頭の変形などを確認し、その程度によって、初期〜進行期〜末期股関節症の診断をします。

治療

生活指導

歩行時には体重の約3〜4倍の負荷がかかっていますので、体重を少しでも減らすことが大事です。長時間歩行や階段昇降など、股関節に負担のかかる動作をできるだけ控える必要があります。貧乏ゆすりを行うことも有効だといわれています。股関節に負担のかからない運動としては水中歩行や水泳がおすすめです。

リハビリ

運動器リハビリテーションを行うことによって、体幹から股関節周囲の硬くて柔軟性が低下している部分をほぐして動きをスムースにします。筋肉がほぐれてバランスよく筋力を発揮できるようになると股関節が安定して痛みが和らぎます。

注射

関節内へのヒアルロン酸注入を行うことで、軟骨の潤滑・保護作用や関節内の抗炎症作用などの効果が期待できます。

薬物療法

必要に応じて鎮痛剤や漢方薬、外用薬の処方を行います。

手術療法

形成不全による初期股関節症であれば、骨盤の骨切り術によって形成不全を改善させる手術を行います。関節の変形が進み、痛みがなかなか改善せず日常生活に支障をきたすような、進行期〜末期股関節症の場合には人工股関節置換術を行います。

膝 Knee

変形性膝関節症

変形性膝関節症とは、加齢にともなって膝関節の軟骨がすり減ることによって、腫れや痛みが起こった状態をいいます。65歳以上では半数以上、男女比では女性に多くみられます。半月板損傷や靭帯損傷といった外傷後の後遺症として、比較的若い年齢でも発症することがあります。
初期は立ち上がりや歩き始め、階段昇降での痛みが出ます。関節に水がたまることもあります。徐々に歩行時の痛みや正座やしゃがみ動作の困難さが生じてきます。進行してくると曲がりにくくなるだけでなく、膝がピンと伸びなくなったり、安静時の痛みを伴うようにもなります。

検査·診断

レントゲン検査にて、軟骨のすり減り具合や骨の棘(とげ)、O脚·X脚の程度をみます。強い痛みがある場合は、骨壊死や半月板損傷などを検索するためにMRI検査を行ったりします。

治療

生活指導

歩行時には体重の約3~4倍の負荷がかかっていますので、体重を少しでも減らすことが大事です。症状に応じて、長時間歩行や階段昇降など、膝に負担のかかる動作を控える必要があります。床からの立ち上がり動作は負担が大きいため、椅子やベッドでの生活をおすすめしています。

リハビリ

運動器リハビリテーションを行うことによって、体幹から下肢全体の硬くて柔軟性が低下している部分をほぐして動きをスムースにします。筋肉がほぐれてバランスよく筋力を発揮できるようになると膝が安定して痛みが和らぎます。

注射

関節内へのヒアルロン酸注入を行います。変形性膝関節症で関節内にたまった関節液には、すり減った軟骨のカスや、それによって誘導された炎症性物質が多く含まれ、本来の関節液の主成分であるヒアルロン酸の濃度が低下しています。したがって、ある程度たまった不必要な関節液は抜く必要があります。そして、粘り気のあるヒアルロン酸を補うことで、軟骨の保護·潤滑作用と炎症を抑える作用といった効果が期待できます。初めは週1回を4~5回連続で行った後、症状に応じて月1~2回の頻度で継続していきます。
ハイドロリリース注射も必要に応じて行います。特に膝内側の腱付着部や神経の通り道に痛みの原因がある場合に有効です。

薬物療法

必要に応じて鎮痛剤や漢方薬、外用薬の処方も行います。

装具療法

O脚がある場合には足底板という靴のインソールを作製して、歩行時に膝の内側にかかる負担を減らします。装具の専門業者が足の型取りをして、オーダーメイドのインソールを作製いたします。もちろん保険適応となります。

手術療法

なかなか痛みが改善せず日常生活に支障をきたすような場合には、O脚を矯正する骨切り術や人工膝関節置換術などの手術療法を検討します。

膝半月板損傷

膝の半月板は膝関節の間にある柔らかい線維軟骨で、膝を安定させ、荷重を分散して軟骨を守るクッションとしての役割をしています。若年者のほとんどはスポーツで強く捻るなどのケガで損傷しますが、40歳以上になると、加齢による変性によって比較的軽い力でも損傷したりします。
症状としては、膝の曲げ伸ばし動作で痛みや引っかかり感が生じたり、炎症を起こして関節液がたまったりします。切れた半月板がはさまり込んで急に膝が動かせなくなる“ロッキング”という状態になることもあります。
損傷の形態は、縦断裂、横断裂、水平断裂、バケツ柄断裂、弁状断裂、変性断裂などがあり、損傷形態によっては放置すると関節軟骨を傷めたりすることになります。

検査·診断

MRI検査にて半月板損傷を認めれば診断できます。レントゲン検査では半月板損傷は分かりませんが、軟骨のすり減り具合やO脚の程度を確認します。

治療

受傷早期の痛みが強い場合は、一時的にシーネ固定や松葉杖を使って安静にします。ある程度痛みが落ち着いたらリハビリを行います。軟骨のすり減りがある場合は、ヒアルロン酸の関節内注入をしばらく行います。内側半月板損傷でO脚がある場合、膝の内側の負荷を減らすために靴のインソールを作製したりします。
2~3ヶ月治療を行なって、それでもなかなか改善しない場合には手術を行います。手術方法には、損傷部分を切除する鏡視下半月板部分切除術と、縫合して修復する鏡視下半月板縫合術があり、損傷形態や軟骨の状態、年齢によって使い分けます。

足 Foot

足底筋膜炎

足の裏には、足底腱膜という踵(かかと)から足の指の付け根まで伸びている線維があり、足の土踏まずのアーチを支えて足への衝撃を和らげるクッションとしての重要な働きを担っています。 その線維の踵の付着部には、歩くときに踵から着地した際の圧迫力とつま先に荷重した際の牽引力が強くかかります。その過剰なストレスによって線維に微小な傷が生じて炎症がおこり、歩く時や走る時に痛みが出る状態を足底腱膜炎(または足底筋膜炎)といいます。特に朝起床時の一歩目での痛みが特徴的です。スポーツや立ち仕事、加齢などによっておこります。

検査·診断

レントゲン検査にて踵の骨の棘(とげ)の有無や土踏まずのアーチの高さなどをみます。

治療

生活指導

まずは炎症の原因となっている運動や仕事などによる足への負荷を減らす必要があります。

リハビリテーション

運動器リハビリ(理学療法)では、足の形状、下肢の柔軟性低下や足趾の機能不全、筋力低下、荷重バランスや使い方のクセなどを評価し、問題点を根本から改善させていきます。
当院では、拡散型圧力波治療器による治療も行っています。

薬物療法

外用剤が基本となりますが、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤を用います。漢方薬を使うこともあります。

注射

歩行に支障がでるほどの強い痛みがあって、できるだけ早く痛みをとりたい場合に限り、ステロイドを局所に注入することがあります。比較的早い効果が見込めますが、線維を劣化させる可能性もあるため頻回に行うことはできません。

装具療法

靴の中に入れるインソールを足のアーチ形状に合わせて作製し使用することによって、荷重バランスを整え足底腱膜にかかる負荷を軽減させます。

スポーツ Sports

当院では、スポーツ外傷やスポーツ障害に対しても幅広く対応しています。
スポーツでは多様な動きをしますが、それぞれのスポーツ特有のフォームや練習方法によって、体の一部だけにストレスが集中してひずみが生じやすくなります。すると柔軟性が落ちて運動機能が低下し、徐々にフォームが崩れていったり、何となく本調子が出なくなったりしてしまいます。ちょっとした不具合だと、あまり対策をとらずにスポーツを継続してしまいがちになり、よけいに無理な練習を頑張りすぎてオーバーユースとなり、さらに調子を落としてしまうという悪循環に陥ってしまいます。せっかくの大事な試合で良いパフォーマンスを発揮できなくなってしまうどころか、運動を中断せざるを得ない状況になることもあります。
スポーツ障害を防ぐためには、運動後にしっかりストレッチをして十分な休養をとり、疲労を回復させることが何より大切です。我慢して治療開始が遅れると症状を悪化させてしまって、結果的に治療期間を長引かせてしまいます。症状が軽いうちに早めの対策をとり、リハビリを中心とした治療を行っていくことで、スポーツを中断せずに競技を続けることができます。不調を感じたら早めの受診をお勧めします。
当院では、理学療法士が一人ひとりに合わせたリハビリを行うことによって、運動機能の回復を促していきます。治療後も再発を予防するために、フォームチェックやトレーニングメニューの見直し、コンディショニングやテーピングの指導などを行っています。
一日も早い競技への完全復帰に向けて全力でサポートしますので、少しでも気になる症状があれば遠慮なくご相談ください。
おもなスポーツ外傷
  • 打撲
  • 骨折
  • 捻挫、靭帯損傷
  • 脱臼、亜脱臼
  • 肉離れ
  • 関節軟骨損傷
  • 肩関節唇損傷
  • 手関節TFCC損傷
  • 膝半月板損傷
  • アキレス腱断裂
おもなスポーツ障害
  • 野球肩
  • 野球肘(内側障害、離断性骨軟骨炎)
  • テニス肘
  • 腰椎分離症(腰椎椎弓疲労骨折)
  • 鼠径部痛症候群
  • 股関節インピンジメント症候群
  • オスグッドシュラッター病
  • ジャンパー膝
  • シンスプリント
  • アキレス腱(周囲)炎
  • 足関節インピンジメント症候群
  • 足底筋膜炎
  • 疲労骨折

骨粗鬆症 Osteoporosis

骨粗鬆症とは、加齢などにより骨の密度が減少してスカスカになった状態のことです。骨粗鬆症になるとくしゃみなどのちょっとしたことでも骨折が起こり、それがきっかけで体が弱って寝たきりの原因になったりして、その後の生活に大きな影響を与えてしまうこともあります。
70歳代の女性の約半数は骨粗鬆症になっているといわれており、閉経後に女性ホルモンが減少することが大きく影響しています。男性はなりにくいですが、75歳を過ぎると注意が必要です。
加齢以外の骨粗鬆症になりやすい要因として、以下などがあげられます。しっかりと予防していくことが大切です。
  • ビタミンDやカルシウムの摂取不足
  • 運動不足
  • 偏食やダイエット
  • 喫煙
  • 飲酒
  • ステロイド剤の長期服用

症状

骨粗鬆症になっても、骨折を起こさないかぎり痛みなどの症状は出ません。以前に比べて背中が丸くなってきたり、背骨の痛みが長引いたりする場合は“いつの間にか骨折”を起こしている可能性があります。

検査·診断

骨密度測定装置で骨密度を測定して診断します。当院では、骨粗鬆症ガイドラインで推奨されているDXA法による腰椎と大腿骨の測定を行なっています。DXA法とは、2種類のエックス線を用いて骨量を測定する方法で、最も正確に骨量を測定することができます。検査時間は10分ほどです。骨密度が若年成人の平均値の70%未満だと骨粗鬆症と診断されます。また、血液検査で骨代謝マーカーや血中カルシウム濃度を調べたりもします。
女性は閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下すると、その後10年ほどで骨密度が大きく減少します。骨密度には個人差がありますので、50歳を過ぎた女性は一度骨密度を測っておいて、ご自身が標準値と比べてどのくらいなのか知っておくことも大切です。

治療

食事療法

カルシウムは骨をつくっている最も大切な栄養素で、骨粗鬆症の予防や治療に欠かせません。その他にも、カルシウムやリンの吸収を助けるビタミンD、骨をつくるのに必要なビタミンKを多く含む食品を摂ることも大切です。特にビタミンDは不足しがちで、食事だけでは不十分なことが多いです。逆に少し控えた方が良いものとして、加工食品、塩分、カフェイン、アルコールなどがあげられます。
当院では、栄養士による栄養指導を行っており、普段の食生活での改善すべき点がないかどうかアドバイスしています。体組成計による筋肉量、体脂肪量、体水分量、基礎代謝量などの測定も行っており、「日頃から運動して食生活には気をつけている」という患者さんにとっても、ご自身の体の状態を客観的に知っていただくことができます。

運動療法

運動して骨に負荷をかけることで、骨をつくる細胞が活発になって骨が丈夫になります。足腰に筋力がつくことで転倒しにくくなり骨折予防につながります。また、日光を浴びる事によってビタミンDが皮膚でもつくられますので、屋外で適度に日光にあたることも大切です。

薬物療法

内服薬には毎日のものから月1回のものまで、注射薬は毎日のものから年1回のものまでさまざまな薬剤があります。いずれも骨粗鬆症の程度とタイプによって使い分け、もっとも適した薬剤を選択します。

関節リウマチ Rheumatoid arthritis

関節リウマチとは、免疫の働きに異常が生じて、関節内にある滑膜という組織が炎症を起こして異常増殖し、炎症性サイトカインが過剰に分泌されて骨・軟骨を破壊してしまう自己免疫疾患と考えられています。関節が炎症を起こして徐々に破壊されていくため、放っておくと関節が変形して動きが悪くなり、関節機能が損なわれていきます。

症状

早期にみられる主な症状は、朝起きたときの手指のこわばりです。熱っぽい、からだがだるい、食欲がないといった症状も出たりします。次第に手足の関節が左右対称的に腫れて痛みが続き、肩や肘関節、膝や股関節など大きな関節にも症状が出ることがあります。炎症が強い時は関節を動かさなくても痛みが出ます。どの年代でも発症しますが、特に30~50歳の女性に多く発症します。

診断

リウマチは早期診断、早期治療が重要です。最近ではより早期の診断のために、アメリカリウマチ学会 ( ACR ) /ヨーロッパリウマチ学会 ( EULAR ) による基準が用いられています。症状のある関節の数、6週間以上症状が続いているかどうか、そして血液検査の結果をもとに診断されます。

治療

治療は薬物療法が主体で、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド剤、抗リウマチ剤、生物学的製剤などを用います。補助療法として、ステロイド剤やヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。関節の破壊が進むと、人工関節などの手術が必要になることがあります。
リウマチの治療は、腫れや痛みなどの症状が改善して日常生活が支障なく送れる「寛解」という状態を目標に行います。どうしても寛解にならない場合は、ある程度コントロールされた疾患活動性の低い状態を目指します。
⑴ 非ステロイド性抗炎症剤
リウマチによる痛みや炎症を和らげます。ただし、病気の進行を止めることはできません。
⑵ 副腎皮質ステロイド
速効性があるので抗リウマチ薬の効果が現れるまで用いたり、活動性の高いリウマチに対して補助的に用いたりします。ただし、ステロイドを長く使用していると、糖尿病や骨粗鬆症、感染症などを合併しやすくなるので、抗リウマチ薬が効き始めたら減量もしくは中止します。
⑶ 抗リウマチ剤
リウマチ治療の主体となる薬で、リウマチによる免疫異常を抑制することで効果を発揮します。治療効果を高めるため、抗リウマチ薬を2種類以上併用することもあります。間質性肺炎などの副作用に注意が必要です。
⑷ 生物学的製剤
抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に用います。炎症性サイトカインを標的として炎症を抑え、軟骨や骨の破壊の進行を抑えることができます。感染症などの副作用に注意が必要です。高価であることが難点でしたが、最近では特許期間終了後の後続品で、薬価の安いバイオシミラーも発売されています。

治療 Treatment

ハイドロ(筋膜)リリース注射

筋肉は筋膜という線維の膜に包まれており、筋膜や周囲の線維組織の中には神経や血管があります。よくない姿勢を長時間とっていると、姿勢を保つための筋肉がずっと緊張した状態のまま動かないため、血流が滞って筋膜の線維が硬くなって癒着していきます。その結果、筋肉がスムースに動くことができなくなったり、神経が圧迫されたりして痛みを引き起こすのです。
ハイドロリリースでは、エコー画像を見ながら針先を筋膜内や神経の周囲に刺入して生理食塩水や局所麻酔薬などを注入し、筋肉周囲の硬くなった筋膜や神経周囲の線維の癒着をはがします。それによって、筋肉の動きをスムースに改善させ、神経·血管の圧迫を取り除いて痛みやしびれを改善させることができます。当院ではできるだけ細い針を使用して、皮膚に刺すときの痛みを軽減させる工夫をしています。
ハイドロリリースが有効な疾患としては、首·肩こりや筋緊張性頭痛、筋筋膜性腰痛、五十肩(肩関節周囲炎)、変形性関節症などさまざまです。
ハイドロリリースによって一旦痛みが改善しても、生活習慣や体の使い方が変わらなければ症状を繰り返すこともありますので、ストレッチやマッサージなどのリハビリ(理学療法)を併用するのが効果的です。特に慢性の症状をお持ちの方は、定期的なリリースとリハビリの継続をお勧めしています。
ハイドロ(筋膜)リリース注射
注射は痛いですか?
予防接種で使用するようなかなり細い針を使用するため、皮膚に針を刺すときの痛みはごくわずかです。内部に薬液を注入するときに少し鈍痛がします。
副作用はありますか?
注射した部位の鈍い痛み、皮下出血や血腫が起こる可能性があります。局所麻酔剤を少量使用しますので、局所麻酔中毒を起こす可能性があります。感染、神経損傷、気胸、腹腔内出血なども起こる可能性はゼロではありません。いずれもエコーを用いることで、完全ではありませんが、リスクを減らすことができます。
注射は何回くらいする必要があるのですか?
個人差がありますが、痛みが戻ってくるようであれば繰り返し行う必要があります。特に回数の制限はありません。
保険はききますか?
はい、保険適応となります。

漢方薬

漢方薬は中国を起源として5~6世紀以降に日本へ伝わり、独自の発展を遂げた日本の伝統医学です。人工的に化学合成された物質でできている西洋薬と違い、漢方薬は2種類以上の生薬、すなわち天然の原料からできています。生薬の組み合わせからできている漢方薬は、個々の体質や症状を考慮して処方され、体に本来備わっている自然な治癒力を促し、症状を根本から改善させていく働きをします。肩こりや腰痛を含め、原因を特定しにくい慢性の症状、体質がからんだ症状には漢方薬が効果的であることが多いです。当院では、そういった症状をお持ちの方に、漢方薬を用いた治療も行なっています。